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降灰後の作業

火山灰が降った後は、あたり一面に灰が積もった状態になります。この火山灰は、タバコの灰などとは違って小さいとはいえ固い角をもつガラス質の粒ですので、不用意に拭き取ろうとすると、傷をつけてしまうこともあります。また、水を含むと重く固まってしまうので、洗い流すのも困難です。乾燥した状態の火山灰は、道を走る車で巻き上がり、空気中に漂います。一刻も早く除去したい火山灰ですが、実は火山灰を除去するのは、かなり困難なのです。

現在でも、桜島の噴火は続いており、鹿児島の街では日常的に火山灰が降り続いています。他の土地から訪れた人にとっては驚きの光景ですが、鹿児島の人たちは上手く灰と付き合いながら生活しているようにも見えます。もちろん、そこには苦労もありますが、火山とともに暮らす姿には、富士山の噴火とその後の降灰対策において、参考になるものが多いのではないでしょうか。




除去作業をするときの注意

屋外で積もった火山灰の除去作業をするときには、かならず防塵マスクを着用し、できればゴーグルなどで目も保護するようにしましょう。細かい火山灰は舞い上がりやすいので、箒で掃くよりも、湿らせてシャベルですくうようにします。除去した火山灰は、丈夫なビニール袋や指定の袋に入れて、自治体の指示のとおりに処分することになります。溝が詰まる原因になるので、排水溝などに流してはいけません。

火山灰は水を含むと重たくなるので、屋根の上に火山灰が積もっている場合にはそれも除去します。屋根に10cm火山灰が積もっている状態で雨が降ると、大抵の家は重さで倒壊の危険性があるからです。火山灰は滑りやすいので、傾斜のある屋根に上って作業をするときには、特に注意しながら行ってください。実際に火山灰の除去中に屋根から転落して死亡した例はいくつもあります。命綱などを使いながら、安全に作業を行うようにしましょう。

除去作業を行うときは、繊維の間に火山灰が入り込まないような、ツルツルした素材の服を着るようにして、作業後は家に入る前に屋外でしっかり火山灰を落とすようにします。火山灰が付いたままの衣類をそのまま洗濯すると、他の衣類に火山灰が付着したり洗濯機が故障したりする原因になるので、よくはたいてから洗濯することも大切です。火山灰が多い日には、洗濯物を外に干すと汚れてしまうので、屋内に干すようにします。


火山灰が降った後の運転

降灰後はできるだけ不要な運転は控えるようにして、どうしても乗る必要があるときには極力スピードを落として走るようにします。火山灰は滑りやすいのでスリップする危険もありますし、走ることで道に積もった火山灰が舞い上がってしまいます。視界も悪いので、昼間でもヘッドライトを点灯してください。また少量の雨の時にワイパーを使うと、フロントガラスに傷がついてしまうこともあるので、ウォッシャー液を使うなどの工夫が必要です。

車に積もった火山灰 土木学会火山工学研究小委員会HPより 車に火山灰が入り込むと車を傷める原因になるので、こまめにフィルター交換を行う必要もあります。車に付着した灰は、拭き取ろうとすると塗装に傷がついてしまうので水で洗い流すことが大切です。長期にわたる降灰だと、ついすぐに汚れるからと放置したくなりますが、火山灰はわずかに酸性を帯びているため何日も放置しているとアルミ部分が錆びてきてしまいます。面倒でも定期的に洗い流す必要があるのです。



火山灰との共存

火山灰の厄介なところは、長期にわたって降り続く可能性があるということです。火山の噴火そのものが何年もの間続くことも考えられますし、火山灰はその噴火のたびに降り注ぐわけです。せっかく除去したところに翌日また火山灰が降るというのは、鹿児島では当たり前のことですし、人々はそれを乗り越えて生活しています。富士山が噴火した場合にも、少なくとも数年の間は火山灰と共存することを覚悟しておく必要があるでしょう。

建物の中にいても、火山灰は入ってきますから、常に家の中が埃っぽくなったり、服の繊維の奥に入り込んだ火山灰が洗濯のたびに固まって衣類がゴワゴワしてきたりなど、それまででは考えられなかったようなことが日常になってきます。細かい火山灰が入り込むことで、電気製品が壊れやすくなることも考えられますし、洗濯物を干す前に今日の火山灰予報を見ることが必要になってきます。しかし、こればかりは仕方がありません。火山の多い日本で生活する以上、火山の噴火や火山灰による被害は古来何度も繰り返されてきたことですし、富士山がこれまで300年に渡って噴火しなかった方が稀なことなのです。もちろん粉塵に弱い精密機器の増加など、現代だからこその不安要素もありますが、現代のもつ技術と情報をもって乗り切っていくように普段から準備しておくことが必要なのではないでしょうか。