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土石流による被害

水俣市土石流災害 総務省消防庁HPより 土石流とは、緩んだ山腹が崩壊して、土砂が雪崩のように押し寄せてくる現象です。集中豪雨などによって引き起こされることが多く、規模にもよりますがかなり大きな建物でも倒してしまうほどのエネルギーを持っています。そのスピードはたいへん速く、飲み込まれてしまうと命に関わるため、危険が指摘されている地域などでは雨量などに応じて早めの避難をするようにしましょう。

この土石流は、富士山噴火においても懸念されている被害のひとつです。 噴火後、場合によってはかなり大きな土石流が発生することも考えられますし、噴火からある程度時間がたってから土石流が発生することもあります。 噴火後しばらくは、土石流の危険性があるということを意識しておくことが大切です。




火山灰による土石流

土石流が起こるときには、いくつかのパターンがありますが、その一つが積もった火山灰に雨が降ることによる土石流です。

雲仙普賢岳の噴火で埋没した家屋 土石流被災家屋保存公園にて 雲仙天草観光圏HPより 火山灰が積もった斜面は、普通よりも土石流が起きやすくなります。もともと火山灰というのは、雨が降るとそれを吸収して重くなる性質があります。屋根に火山灰が積もった状態では、雨が降るとそれを洗い流すどころか、一気に重くなって家屋が倒壊することもあるほどです。もちろん山の斜面に降り積もった火山灰も例外ではなく、富士山ハザードマップ検討委員会によると、10cm積もった火山灰に1時間当たり10mm以上の雨が降ると土石流が発生しやすくなるのです。1時間当たり10mmの雨とは、決して豪雨というほどの雨ではなく、普通にシトシト雨が降るだけでも土石流を起こすということになります。

土石流は、土砂と水が合わさるようにして押し寄せてくるため、スピードがかなり速く、斜面の状態にもよりますが、早いものだと時速40qものスピードになります。発生しそうなときには事前に逃げておくか、いつでも逃げられるようにして普段と違う音が聞こえてきたらとりあえず逃げるくらいの準備が必要です。

特に富士山が噴火した場合は、富士山はもちろん、周囲の山にも大量の火山灰が降り積もります。そのため、富士山だけではなく他の山でも土石流が発生しやすくなるので、山間部に住む人たちは特に注意が必要です。静岡、山梨はもちろん、神奈川県などもかなりの部分で10cm以上火山灰が積もることが予想されるので、火山灰対策だけではなく、土石流が起こりうるということも想定しておきましょう。



山体崩壊による土石流

また、火山の噴火の衝撃や、それに伴う地震の揺れで山肌が大きく崩れる山体崩壊を起こすこともあります。 山体崩壊は、規模によっては大量の土砂がかなり広範囲にわたって雪崩のように押し寄せてくるため、甚大な被害を及ぼします。こうした山体崩壊による土石流は、雨が降っていなくても起こるうえ、被害の規模も大きくなるため、早めの避難が必要になります。

富士山の場合、直下に断層も見つかっていることから山体崩壊を懸念する声も多く、富士山が大規模な山体崩壊を起こしたときの被害はさらに大きなものになることが予想されます。実際、現在の御殿場市周辺は2900年前の大規模な山体崩壊の際に崩れ落ちた御殿場泥流と呼ばれる土砂によるもので、今後も富士山が山体崩壊を起こす可能性は十分にあるのです。

最近は1888年に水蒸気爆発で磐梯山が、1984年の長野県西部地震では長野県の御嶽山が山体崩壊を起こしました。現在でもこれらの山は、その痕跡をくっきり残し、斜面に崩壊の跡を残しています。


溶けた雪による土石流

また、冬など山頂部に雪が多く積もっている状態で噴火が起きた時は、激しい泥流が広範囲に押し寄せる可能性が高いので、避難区域はグンと広がります。 噴火の熱は雪を溶かし、溶けた雪が土砂や火山灰などを巻き込みながら一気に流れてくるのです。これは融雪型火山泥流と呼ばれ、谷底などを川に沿って流れていきますが、川が氾濫して洪水を引き起こすこともあります。高速で流れてくるため、付近の住民は早急に避難することが必要です。

富士山は標高が高い上に夏でも万年雪が残っていますから、特にこうした泥流には注意が必要です。ハザードマップでも、雪が積もっているときの泥流は、かなり遠くの地域まで警戒するように記載されています。泥流によって川の氾濫などを起こす可能性があるので、雪が積もっているときに噴火が起きたら、川へ近づかないようにしましょう。