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富士山噴火の予兆

ここ最近、富士山噴火の予兆がいくつも発見されており、ここ数年以内に富士山が噴火するのではという声が高まりつつあります。

最近話題の富士山噴火の兆候としては、活断層の発見や表面温度の上昇、付近での湧水の異常な増加などがあげられますが、富士山噴火を確実に示唆するものではありません。しかし、富士山が噴火したときの災害規模を考えると、その兆候として見落とすことはできないのではないでしょうか。



富士山直下に活断層を発見

2012年5月、文部科学省がまとめた報告書には、富士山噴火に関わる衝撃的な内容が記載されていました。それは、富士山直下にそれまで知られていなかった活断層が伸びているというものです。活断層というのは地下にある地層や岩盤の割れた面がずれている断層のうち、今後も動く可能性があるもののこと。つまり、富士山の真下で地盤のずれが起こる可能性があるということなのです。

一般的に地盤がずれた時に懸念されるのは地震ですが、その真上に富士山があるということは、地震だけではなく噴火を引き起こすことも考えられます。今回の調査は、文部科学省が山梨県富士吉田市から静岡県裾野市にかけて行ったもので、人工的に起こした揺れに対して地震計の反応を測定し、その結果から地下の構造を割り出したものです。その結果、北東から南西にかけて30キロにわたって断層が存在することがわかりました。

富士山はこれまでも宝永地震という巨大地震の49日後に宝永噴火がおこるなど、地震を引き金とする噴火が起こっているだけに、これまでは予想される東海沖地震に伴う噴火が心配されていましたが、それ以外にも富士山直下で地震が起こる可能性が生じてきたのです。

直下型の大地震が起こった場合、富士山が噴火のみならず山体崩壊を起こす可能性もあり、大規模な山体崩壊を起こした場合には御殿場市から太平洋にかけて富士山の大量の土砂が流れ込むことが予想されています。早急な解明と周辺住民への周知が必要となるため、文部科学省ではさらなる調査を進めています。



地表温度の上昇

火山の噴火が起こる前には、地中のマグマが徐々に地表に向って上昇してくるため、地表温度が高くなるといわれています。実際、阿蘇山が噴火する前には、地表を温度の測定で明らかな上昇が観測されました。

富士山において現在明確な地表温度の上昇は確認されていませんが、木村政昭氏、山村武彦氏の共著による「富士山の噴火は始まっている!」では樹海近辺に散在する氷穴の氷が年々小さくなっていることから、地表温度の上昇が考えられると記述されています。氷穴とは、一年中氷が絶えない洞窟で、天然の冷蔵庫として観光地にもなっていますが、その氷が昔に比べて減っているというのです。もちろん観光客の増加などで温度の上昇があったのかもしれませんが、地表温度の上昇の可能性も否定できません。

また、富士山8合目あたりに毎年6月ごろに見える「農鳥」の出現が年々早まっているというのも地表温度の上昇を懸念する理由のひとつです。農鳥とは、残雪が鳥の形に溶け残ったもので、昔からこれが見えると農作業の始まりの合図だとされていました。しかし、この農鳥の出現が徐々に早まりつつあるのです。そもそも富士山の万年雪が減っているのもそれと同様で、富士山全体の地表温度の上昇が考えられます。2012年の農鳥は6月12日でしたが、それ以前の1月31日にも農鳥が出現したため、富士山噴火を心配する声が高まるきっかけにもなりました。(写真2 静岡新聞@Sより)


湧水の増加

富士山のふもとに位置する富士宮市は、もともと富士山の湧水の豊富なところで住民も美しい湧水の恩恵を受けて生活していた土地です。しかし、その富士宮市で去年から異常なほどの湧水が止まらないといいます。

きっかけは台風による道路の冠水だったのですが、排水しても井戸や床下からの湧水が止まらないと住民たちが頭を悩ませているのです。浸水の被害が相次ぎ、行政も対応に追われています。富士山の湧水は、富士山に降った雨が斜面の火山岩や岩盤に染み込み、地下に溜まったもの。大雨が降ると湧水自体が増えるのは納得できますが、これほど止まらないというのはやはり地殻の変動が影響しているのでは?と心配する人が増えているのです。

富士火山帯の研究を行っている琉球大学の木村政昭名誉教授も水噴火を懸念するひとりです。

「水噴火は溶岩が噴き出すかわりに、水やお湯が噴き出す現象です。噴火は地下にあるマグマがプレート活動によって押し上げられ、割れた地表で発生する。水噴火はマグマではなく地下水なのですが、火山の状況としては、噴火とあまり変わりのない状態にあるのです。」

さらに、河口湖の湖底から吹き出す天然ガスにも注目しており、「マグマから直接噴出している火山性のガスではないので、噴火の前兆現象と捉えない人もいますが、1年ほど前から極端に増えています。また、富士山の東斜面にある自衛隊の演習地に数か所大きな穴が空き、そこから摂氏40、50度の噴気が出ています。これらの状況を考えると、向こう3年以内に噴火が起きてしまう可能性はかなり高いと思われます」(女性セブン2012年5月31日号)と発言しており、噴火の可能性を示唆しています。

また富士五湖のひとつ、精進湖の近くでは普段枯渇している「赤池」が2004年10月以来となる7年ぶりの出現で話題となりました。2ヶ月ほどの出現で現在では再び枯渇しており、富士山との関連は分かっていませんが、いつもと違う現象が起こっているのは確かなようです。

富士山噴火の予兆でないにしても、これだけの水が地中で出口を失っているとなると、地盤が緩んで地震や噴火を引き起こす原因にもなりかねません。富士山周辺で起こる数々の現象には、今後も注目していく必要があるといえるでしょう。