富士山噴火の歴史・予測・被害・対策などの情報サイト



富士山噴火と首都機能

火山灰Wikipediaより富士山の噴火で懸念されるのが、首都機能の喪失です。富士山と東京は、私たちの感覚では離れていますが、地球の規模で考えるとわずかな距離です。実際、300年前に起こった富士山の最後の噴火では、東京に5センチ近くも火山灰が積もったという記録が残っています。

火山灰は、ただの灰ではありません。タバコの灰のようにサラサラしたものを想像していると驚くかもしれませんが、火山灰はひとつひとつの粒は細かいものの、角のとがったガラスのかけらのようなものです。口から吸いこんだり、目に入ったりしないように注意する必要があります。この火山灰が首都・東京に降り積もったときに想定されることはどのようなことなのでしょうか。




電子機器のストップと経済への影響

宝永の大噴火でも東京には大量の火山灰が降り注ぎましたが、現在と江戸時代では圧倒的な違いがあります。
それは、電子機器の有無です。

火山灰の影響で最も懸念されるのは、電子機器への影響です。火山灰は普通の灰と違って、マグマなどが細かく砕けたもので、鉄分などを含んでいることが少なくありません。電磁波を発しているとも言えわれており、その成分は火山や噴火の内容によっても異なるため一概に言うことはできませんが、細かい火山灰は空気中を漂って電子機器の中に入り込み、そのシステムをダウンさせてしまうのです。

街の信号はもちろん、東京には日本経済を支える官公庁や大手企業が集中しています。その中枢となっているコンピュータが短時間でもダウンしてしまうと、経済に与える影響は計り知れません。富士山の噴火が日本崩壊につながるという説は、この電子機器への影響が根拠となっています。テレビ、パソコン、携帯電話が使えなくなることで情報は遮断されます。東日本大震災の時には、携帯電話のツイッターなどによるリアルタイムの情報が役立ちましたが、富士山の噴火では携帯電話が使えなくなる可能性もあるのです。

また、火山灰の影響は交通機関にも現れます。特に飛行機のエンジンに火山灰が入り込むと、エンジンに不具合を起こす危険性があるのです。実際、火山灰の中を飛行した飛行機のエンジンが4つとも停止して数分間落下するという事故は過去に何件も起きており、幸いいずれも火山灰を抜けた後エンジンが再稼働したため大事故には至りませんでしたが、危険な事故であることには変わりありません。2010年にはアイスランドの火山の噴火で火山灰の影響を避けるために多くの飛行機が欠航になって話題になりました。飛行機が飛ばないということは、島国である日本においてはかなりのダメージです。しかも、溶岩流などが大量に太平洋に向かって流れ出た場合、東海道が分断されてしまうことも考えられます。東海道が使えず空路もたたれたとなると、日本は真ん中で二つに分断されたようなもの。経済活動や被災者の支援に多大な影響が現れるのは明らかです。最悪の場合、食料の供給などが滞って、飢饉が生じることもあり得ます。

健康への影響

火山灰はもちろん健康にも影響を及ぼします。これはもちろん首都だけではなく火山灰が降るすべての地域にいえることですが、火山灰が健康に及ぼす影響も見過ごすことはできません。

火山灰は非常に細かい粒子なので、呼吸とともに吸い込んで肺の奥に入り込んでしまうことがあります。そうすると、喉などに炎症を起こして、咳や胸の痛みなどが生じたり、もともと喘息など呼吸器系の疾患を持つ人は症状が重くなりやすいので注意が必要です。火山灰自体が毒性を持っているということはないのですが、硫黄酸化物などの刺激性のガスが表面に付着していることはあり得ます。とはいえ、よほどの量を吸い込まない限り、それが原因で深刻な病気になるということはなさそうです。

火山灰は小さくても固い粒になりますから、目に入った時には炎症を起こすことがよくあります。火山灰が降っているときには、コンタクトレンズではなくメガネを使い、できればゴーグルなどで目をしっかり覆って火山灰が目に入ることを防ぎましょう。火山灰が目に入ると、異物感や痛みを感じたり、目の充血、目やにがでやすくなるなどの症状があります。その状態で目を擦ると角膜に傷がついたり、ひどい時には角膜剥離を起こしたりすることもあるので決して擦らないようにしてください。

日本は火山大国であり、国土のいたるところに過去に噴火した際の火山灰が降り積もっているといわれています。実際、関東平野を形成する関東ローム層も、古代の箱根や富士山の火山灰が堆積したものです。また、火山灰自体は決して毒性のある物質ではなく、むしろ健康的な成分として加工され石鹸に練りこまれたりもして活用されてきました。噴火によって降り注ぐ火山灰は、もちろん体にとっては異物になるので吸い込んだりするのは良くありませんが必要以上にパニックになることもありません。冷静に対処することが大切です。



積もった火山灰をどうするか

数センチとはいえ、積もった火山灰は全体では相当な量になりますから、この灰をどうするのかというのも問題です。

火山灰は、雨が降っても洗い流されてはくれません。雨がふると水分を吸収して重たくなってしまうのです。屋根の上に火山灰が積もったまま雨が降ると、積もった火山灰が雨を吸収して重くなり、家屋が倒壊することもあります。そのため、ある程度家の屋根に火山灰が積もったら、雪かきをするように屋根から火山灰を落としてやることが必要です。

ムラピ火山の噴火で家の中に積もった火山灰たとえば公園や庭などの土壌に降った火山灰は、必ずしも撤去することはありません。もちろん撤去してもかまいませんが。それに対して、道路や家の屋根などに積もった火山灰は、こまめに取り除く必要があります。被災地から関東全域で取り除かれた大量の火山灰をどうするのか、それも事前に考えておく必要があるのかもしれません。